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君ケ野ダムの桜

美しい桜を見に行こうと、仲良し3人で出掛けました。仲良し3人組ですもの、楽しい旅になるハズでした。

JR松阪駅より9時34分発の名松線に乗った途端、お決まりのお喋りに花が咲きました。
フト我に返り停車駅を見ると、「家城駅」とあります。これは駅名が書かれた駅名板で判明。

そう・・・なんとなく最初から違和感があったのは静かな車内(おしゃべりは別として)・・・・・。あとでよ〜く考えれば、始発の松阪より車内放送がなかったのです。で、外を見て始めて駅名が分かったという状態です。

同行者が言いました、「次の竹原駅でおりるのよ」。
その後は又もやおしゃべりの続き、よく話題が尽きないと思われるでしょうが、そこは気心の知れた仲間。
一言しゃべる毎に笑いの渦、要は一緒に出かけられるだけで楽しいのです。

「それにしても、次の駅までが長いな〜」と、先程の案内役の一人。
一両編成のローカル列車、前方の運賃表を見てギョ、ギョ、ギョッ!!!
“北鎌倉” 「北鎌倉だって!」3人一斉に運転席のほうへ駆け出しましたが、時はすでに遅し。
今、まさに北鎌倉駅に到着です。

「竹原駅で降りるつもりだったけど、乗り越してしまったわ」 「おしゃべりに夢中で気がつかなかったわ」 「どうしょう?一駅戻る列車は?」運転手さんに集中攻撃です。

若い運転手さんは冷静に一言。「見なかったことにしますから、ここで降りてください」「えっ?え〜」「でも、戻る列車は?」
「この列車が伊勢奥津駅に行って、戻ってくるまでありません」
「どれくらいで戻ってくるの?」
「一時間くらいです」・・・ガ〜ンと頭を棍棒で殴られたような感じです。

急かされて降りては見たものの、3人とも顔を見合わせて黙りこくってしまいました。
おしゃべりの代償がこれなんだ・・・どうする?ったって歩いて戻らなきゃしょうがないでしょう。

ちょうど駅に居た近所の住民らしき方に尋ねました。「竹原駅まで行きたいんですけどどれくらい掛かりますか?」
声を掛けられた方は気の毒そうな表情で「歩けば一時間位かしら」
一時間、という事は竹原駅から君ケ野ダムへ行くために乗るコミュニティバスには乗れないって事。
サイアクの事態です。

黙々と歩き続けますが、人っ子一人どころか車さえ一台も通りません。
「タクシー来ないだろうな〜」静かな良い所ですがバス停が見当たりません。
「ヒッチハイクする?」竹原駅近くで
「車も来ないし、もし通りがかってもこんなお婆さん揃いで止まってくれる物好きは居ないと思うよ」

ホッ!!!バスだよ。思わず手が上がりました。期せずして止まってくれましたよ、バスが!。
ありがとう、運転士さん。お礼を言いつつ、これまでの経過を口々に報告する3人。
乗り合わせた乗客は笑いをこらえている様子。大げさかもしれませんが、地獄に仏。本当に助かりました。

この地域を走るコミュニティバスだからこそ、手を上げて止まっていただいたようです。
20分近くバスに乗せていただいて、(4百円支払って)降り損なった伊勢竹原駅で下車。
ここからはもう本当に歩くしかないようです。君ケ野公園まで約一時間の山道を登山です。

いいお天気に恵まれて、急勾配の山道を歩けばソリャア、ダイエットになるでしょう!!!歩け歩け。
お陰で美しい桜並木もじっくり鑑賞しながら歩けたし、珍しい花を見ることも出来たし、結構いい事もあるじゃないですか、ねっ!

左の写真の花、名前は分かりませんが何となく不気味。以前熊野古道を歩いていたときにも見かけました。あまり日の当たらないところでひっそりと咲いていたのを思い出しました。


ダムは見えてはいるんですが、まるでいろは坂のようにクルクル周ってばかりで。もうだめ〜、へたり込みそう。一人だったらキット、音をあげていると思いましたが3人で励ましあってやっとたどり着きました。頂上付近ではもう桜を見上げる元気もなくしていました。

美しい、本当に美しい。ダム湖のまわりはサクラ、サクラ、サクラ。深く水を湛えたダムの面に桜色が映っています。

頑張って登ってきた甲斐がありました。ダム湖では時々噴水が見られました。

風の向きによって水の描き出す形が変わります、いつまで見ていても飽きませんが時間でピタッと止まってしまいます。風にそよぐ若い柳、勢いのある水しぶき。さわやかです。

町の喧騒から逃れてサクラ吹雪の下でいただくお弁当は格別に美味しく、汗を流しながら登ってきた山道に咲いていた種々の野草の話に盛り上がりました。もちろん、蕨も収穫しました。

帰り道まではとても歩けない。コミニティバスに乗れるよう時間の確認はバッチリです。

“終わりよければ全てよし”という事にしましょう。
それにしても、とんだジタバタ劇をやってしまったものです。なんだったんだろうな〜、3人も揃っていて乗り越すなんて。
止まらなかった様な気もする、???だって、いくらお喋りしていても列車が停まれば感覚でわかるでしょうに。
一番の問題は、ローカル列車といえども車内アナウンスくらいあってもよさそうなもんだと憤慨。3人ともキツネに騙されたような不思議な感覚で帰途に着きました。帰ってからも暫くは電話で停まったか、停まらなかったか話し合っていました。で、やっぱり分からない???

この旅行の9日後、名松線家城駅で無人列車が走り出すという事故が起きました。

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